一般に地震による被害は、建設年度の古い建築物ほど大きな被害が生じていますが、小さな被害にとどまった古い建物も多くあります。
心配するよりもまず耐震診断を行って、建物の耐震性能を理解することが大切です。
これまでの大地震において、鉄筋コンクリート造建物に見られた典型的な被害の例を以下に示します。
駐車場として使われるマンションの1階のように、他の階に比べて極端に耐震壁が少なく、ほとんど柱だけで建物を支えている階のことをピロティといいます。ピロティには地震抵抗力の大きな耐震壁が少ないわけですから、設計には適切な配慮が必要です。兵庫県南部地震で鉄筋コンクリート造の共同住宅に最も多く見られた被害は、ピロティの被害です。(写真-1)は、ピロティの柱が完全に壊れ、建物の1階が落階して自動車を押し潰してしまった例です。 |
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現在の耐震基準で設計された鉄筋コンクリート造建物のうち、兵庫県南部地震によって大破以上の被害を受けたものが十数棟ありましたが、そのほとんどが(写真-2)のようなピロティの柱の被害です。 |
写真-2 ピロティの被害 |
中高層の共同住宅としてよく見られる形式で、下層部が店舗、上層部が住戸となっているものが多くあります。一般に、住戸部は壁が多く配置されていますが、店舗部は比較的壁が少なくなっています。このような建物では、地震の揺れによる変形が壁の少ない階に集中し、大きな被害が生じることがあります。設計には適切な配慮が必要です。(写真-3)の建物では、3階の店舗部が層崩壊を起こしています。 |
写真-3 店舗部の層破壊 |
壁が平面的に偏って配置されると、建物にはねじれるような力が作用し、壁が少ない部分の柱が大きく振られて破壊してしまうことがあります。これを避けるには、建築物の柱や壁は、各階とも平面的にバランス良く配置する必要があります。(写真-4)は角地に建つ建物で、道路に面する部分にはほとんど壁がありません。そのため、地震によって道路側の柱が大きく振られて破壊し、建物が道路側に傾いています。 |
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低層共同住宅の代表的な構造形式である壁式構造は、高い耐震性を有しています。(写真-5)は、兵庫県南部地震で被害が集中した地域に建つ、4階建ての壁式構造による共同住宅ですが、構造的被害は生じていません。 |
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建物の基礎は、建物自身の重みや地震の揺れによって建物に加わる力を地盤に伝える重要な構造体です。鉄筋コンクリート造建物では、規模、構造形式、地盤条件に応じて、直接基礎、杭基礎といった基礎形式が採用されています。 建物の地上部は軽微な被害しか生じていないのに、地中の杭が被害(写真-6)を受けたために、建物自体に大きな傾斜が生じることもあります。 |
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